オープンな問いを、クローズドな問いに変える

会社の数字が伸びてくると、社内から必ずこんな声が上がります。


「人が足りません」

現場は必死です。その訴えは、よくわかります。
でも私は、すぐには人を増やしません。

増員とは、利益を分け合う人数を増やすということ。
売上も利益も変わらないまま頭数だけ増やせば、一人あたりの取り分が減るだけだからです。

だから私は、問い返します。
その仕事は、重要度が高いのか。難易度が高いのか。
まず、そこを分けようと。

看板の点検を、定性から定量へ

なぜ、仕事を分けられるのか。

私たちが看板の点検を、定性から定量へと変えてきたからです。

かつて点検は、職人の目と勘の世界でした。
「なんとなく危ない気がする」
その判断は、経験を積んだ人にしかできません。

これは、答えが一つに定まらない「オープンな問い」です。

私たちは、この問いを非破壊検査で数値化しました。
どこを、どう測り、どの数字なら要注意か。
「この数値なら大丈夫、この範囲なら要注意」
イエスかノーで答えられる「クローズドな問い」に変えたのです。

クローズドな問いが、成長の階段をつくる

問いをクローズドに変えると、何が起きるか。

初心者でも、まず定型の仕事から入れるようになります。
数値という物差しがあるから、経験ゼロからでも一段ずつ登っていける。
定型を覚え、判断を覚え、やがて難しい仕事を任される。

成長の階段が、はっきり見えるのです。
勘の世界のままでは、この階段は生まれませんでした。

そして、ここに仕事の仕分けが重なります。

クローズドな問い、つまり答えの決まった定型の仕事は、パートさんや在宅の仲間、そしてAIと力を合わせて進めていく。
オープンな問い、つまり答えが一つでない重要で難しい仕事は、社員が担う。
この店舗にとって最善の修繕は何か。どう判断するか。
経験と感性のいる仕事は、人にしかできません。

クローズドにできた会社が、AIに任せられる

ここからが、いちばん伝えたいことです。

問いをクローズドに変えられる会社だけが、AIを使いこなせます。

AIに仕事を任せるには、その仕事が言葉になっていなければなりません。
手順が明文化され、基準が数値化されている。
イエス・ノーで答えられる形になっている。
そういう仕事しか、AIには渡せないのです。

頭の中だけにある勘や、その人にしかできない曖昧な判断は、AIには渡せません。

私たちには、15年かけて積み上げてきたものがあります。
看板の点検を、非破壊検査で数値化してきました。
手順を、ISOとして文書に落としてきました。

このコツコツの積み重ねが、そのままAIに渡せる「設計図」になっているのです。

分けることは、人を活かすこと

仕事を分けるというと、冷たい話に聞こえるかもしれません。

でも私は、逆だと思っています。

これは、仕事に上下をつける話ではありません。
それぞれの持ち場で、いちばん力を発揮できる仕事を担ってもらう。
ただ、それだけのことです。

パートさんは、会社の大切な仲間です。
在宅で、限られた時間の中で、正確な仕事を積み上げてくれる。
その働きがあるから、社員は重要で難しい仕事に集中できるのです。

事実、うちにはパートから社員になった仲間もいます。
定型の仕事で信頼を積み、少しずつ任される幅を広げ、正社員になっていった。
入り口の仕事を軽んじる会社に、そんな道は生まれません。

私たちの理念は、いま「快適の創造」という一語にたどり着きました。
お客様に快適を届けるのも、社員が快適に働くのも、根は同じです。
一人ひとりに活きる場所をつくることが、その第一歩なのです。

分けることは、切り捨てることではありません。
分けることは、活かすこと。

さて、あなたの会社の仕事は、オープンとクローズド、きちんと分かれているでしょうか。


最新記事

最新記事

髙倉 博

株式会社店舗ドック代表取締役

1970年、東京都世田谷区生まれ。
大学進学に失敗し簿記の専門学校へ進んだ経験が、「大卒者には負けない」という原動力となる。

卒業後、父親の会社で「自分が脇役の人生になってしまう」と焦りを感じて起業。
創業7年目の34歳で看板用LED事業で成功を掴むが、取引先の倒産などが重なり、36歳で1億円の借金を抱える。

最愛の母の死をきっかけに人生を見つめ直し、コンサルタント長山宏氏との出会いを経て再起。
「不安や不便を見つけ、クリエイティブに解決する」(快適の創造)というミッションを見出し、大手企業向けの看板業務代行に注力して評判を得る。

しかし42歳の時、社内クーデターを機に自暴自棄となり酩酊し、社員旅行の宿泊先の窓から飛び降りるも、標識に衝突し奇跡的に命拾いする。
自分を見つめ直し「看板で悲しむ人をゼロにする」という使命を確信し、「看板ドック」事業に邁進。

多くの顧客に支持され、2025年10月1日には、27年間続いた社名を「株式会社店舗ドック」に変更し、業界の更なる変革を目指している。


2026

7

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31