心のハーモニーは、酒席から

団長になって初めてのコンパを開きました。


三軒茶屋に、三十一人。
共通のテーマはただ一つ、銀団愛を語り合うこと。

歌の練習ではありません。
反省会でもありません。
ただ、互いを知るために集まりました。

なぜ、コンパなのか

私は盛和塾で十年学ばせていただきました。

稲盛和夫さんが大切にされていたものの一つが、コンパです。
単なる飲み会ではありません。
経営者と社員が、膝を突き合わせて本音を語る場。
そこでしか通わないものがある、という思想です。

私はこれを、合唱団でもやってみたいと思ったのです。

私たちの掲げるミッションは「世界を心のハーモニーで満たす」。
けれど、そもそも自分たちの心がハーモニーになっていなければ、世界どころではありません。

では、心のハーモニーはどこから生まれるのか。

答えは、二つだと思っています。
互いを知ること。そして、歴史を知ること。

まず、知り合うこと

団員は五十名を超えました。
二十代から七十代まで、そのほとんどが経営者です。

大きな組織になったのは嬉しいことですが、正直に言えば、全員が全員を知っているわけではありません。
毎週顔を合わせていても、名前と顔が一致するだけで終わってしまう人もいます。

パート練習では、隣の人の声は聞けても、人生は聞けません。

だから、場を用意しました。

三十一人が酒を交わすと、面白いものです。
普段は寡黙な方が、驚くほど熱く語り出す。
先日入った新人が、七十代の先輩と肩を並べて笑っている。

歌は、人が出ます。
その人が知らない人だと、声は重なっても心は重なりません。
けれど「あの人はこういう人生を歩いてきたのか」と知った途端、その人の声が違って聞こえるようになる。

これは、経営でもまったく同じだと思います。

そして、歴史を知ること

もう一つのテーマは、歴史でした。

銀座男声合唱団には、これまでの歩みがあります。
初代、二代目と受け継がれ、私は三代目の団長です。

つまり私は、自分が始めたものを預かっているのではありません。
先人が築いたものを、預かっているのです。

新しく入った人には、この歴史を知ってもらいたい。
どういう想いで始まり、何を大切にしてきたのか。
それを知って歌うのと、知らずに歌うのでは、まるで違います。

文化の継承とは、こういう地道な作業なのだと思います。

規則をつくることではありません。
マニュアルを配ることでもありません。
語り、聞き、飲み、笑いながら、少しずつ染み込ませていくものです。

サグラダ・ファミリアは百四十年以上かけて建てられました。
誰も完成を見ないまま、それでも同じ志が受け継がれていった。
文化とは、そうやって残るものなのでしょう。

愛を、語り合う

この日の共通テーマは「銀団愛を語り合う」でした。

照れくさいテーマかもしれません。
けれど、大人が真面目に「この団が好きだ」と語り合う場は、案外貴重です。

好きな理由は、人それぞれでした。
歌が好きな人。仲間が好きな人。舞台の高揚感が好きな人。

理由が違っていていいのです。
むしろ、違うほうがいい。
同じ音を出すのに、違う声が必要なのと同じことです。

大事なのは、それぞれの愛が同じ方向を向いていること。

会社も、合唱団も、結局はそこだと思っています。
指示では動きません。共鳴でしか動きません。
そして共鳴は、互いを知らないところからは生まれないのです。

次の舞台は、十一月二日。浜離宮朝日ホールです。

あの日に向かって、これから稽古は熱を帯びていくでしょう。
その前に、こうして飲めてよかった。

三十一人の顔を思い出しながら、心からそう思っています。


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髙倉 博

株式会社店舗ドック代表取締役

1970年、東京都世田谷区生まれ。
大学進学に失敗し簿記の専門学校へ進んだ経験が、「大卒者には負けない」という原動力となる。

卒業後、父親の会社で「自分が脇役の人生になってしまう」と焦りを感じて起業。
創業7年目の34歳で看板用LED事業で成功を掴むが、取引先の倒産などが重なり、36歳で1億円の借金を抱える。

最愛の母の死をきっかけに人生を見つめ直し、コンサルタント長山宏氏との出会いを経て再起。
「不安や不便を見つけ、クリエイティブに解決する」(快適の創造)というミッションを見出し、大手企業向けの看板業務代行に注力して評判を得る。

しかし42歳の時、社内クーデターを機に自暴自棄となり酩酊し、社員旅行の宿泊先の窓から飛び降りるも、標識に衝突し奇跡的に命拾いする。
自分を見つめ直し「看板で悲しむ人をゼロにする」という使命を確信し、「看板ドック」事業に邁進。

多くの顧客に支持され、2025年10月1日には、27年間続いた社名を「株式会社店舗ドック」に変更し、業界の更なる変革を目指している。


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