情報に接するときはまず本質を理解して

デジタル化が進んだ現在、わたしたちが日々受け取っている情報の量は、アナログ時代のそれの数十倍から数百倍になっているのだそうです。

さらにいうと、増えているのは情報量だけではなく、判断の回数や切り替えの頻度も爆発的に上がっているのだとか。


スマートフォンの画面をスクロールして、「見る」か「見ない」かを判断する、そこに通知が入るから切り替える、動画を倍速で聴きながら別のSNSを閲覧する。
慣れてくると加速度的にやってしまいますが、脳はさぞ疲れていることでしょう。


自分が接する情報の量を管理することは、脳を守り、時間を無駄にしないために非常に大切です。
量とともに気をつけたいのは情報の質、質の高い情報を選ぶ目を持ちたいですね。
僕はそこにもう一つ、情報の本質を理解することを加えたいと思います。


そう思ったきっかけは、少し前にニューヨークを来訪された先輩のお話からでした。
先輩のお嬢さんが住まわれていて、お孫さんが生まれたので会いにいかれたそうなのですが、そのときに聞かれたのが、
「ニューヨークの低所得者の概念は年収2,000万円以下」
という事実だったと。


「2,000万円以下ですか?!」
僕は思わず聞き返してしまいました。
日本で「低所得者」と聞いて僕がイメージするボーダーラインは300万円です。
公的に住民税非課税世帯とされるのは、単身者で年収100万円から110万円以下。
いずれにしてもニューヨークの低所得者の概念との差がこんなに著しいとは、驚きです。


この概念をもって、ニューヨークで働く日本人の収入について考えてみるとどうなるでしょうか。

「ニューヨークにいけば、寿司職人で年に1,000万円は余裕で稼げるよ」
なにも知らない日本の寿司職人はこう答えるかもしれません。
「へえ、そりゃいい、日本じゃがんばっても700万なんだよ、俺もいこう、ニューヨーク!」


「ニューヨークにいきたいかあ?!」「イエーイ!!」
昔のクイズ番組みたいなことになりかねません。
ニューヨークで年に1,000万円稼いでも、低所得者を脱するまでにはあと1,000万円の年収が必要なのです。
そうとも知らずにニューヨークに渡った寿司職人の運命やいかに。
情報の本質を知っているかいないかで、人生の展開は全く変わってしまうのです。


話してくださった先輩のお嬢さん一家も、アパートの賃料が2年前の倍近くに上がり、引越しはされたものの、年間1,000万円はかかるとおっしゃっていたそうです。
寿司職人の1,000万円は家賃で消える計算になりますね。
2,000万円以下は低所得層という概念が現実味を帯びてきました。


僕が銀座男声合唱団のカーネギーホール公演でニューヨークを三度めに訪れた、昨年11月にも、物価高騰を実感する場面が多々ありました。
たとえば飲食店にいったとき。
ウエイターやウエイトレスはチップで生計を立てているので、お客さんは払わないわけにはいきません。


代金を支払ったあと、レジのモニターに、チップのボタンが出てきます。
10%、15%、20%、この三つから割合をお心のままに選んでください、というボタンだったはずが、今回いったら10%の選択肢が消えていたのです。
15%と20%だけ。


また、店が空いているのに、入れようとしないところもあります。
お茶だけでは売り上げもチップも少ないからお断り、食事をするなら入れてあげましょう、という態度です。
ミネラルウォーターが1本1,000円する世界ですから、さもありなん、ですが、ほんとうに世知辛いというかなんというか。
リッチなやつしかニューヨークにはくるな、と街のあちこちに書かれてでもいるようです。


翻って日本の僕たちの生活を見てみましょう。
なによりありがたいのは健康保険です。
骨を一本折ったとしたら、ニューヨークでは治療費が100万で済むかどうか。
日本では健康保険によって3割負担で治せます。
治療費の差が90万円だとしたら、日本では見えない90万円を得ているとも考えられますよね。


その見えない差額が生活の至るところに上乗せされているのなら、日本の年収1,000万円はニューヨークの5,000万円にも匹敵するのかもしれません。
手取り15万でも、派遣で25万円でも、何倍もの豊かさを享受しているといえるでしょう。


だから、日本の低所得者とニューヨークの低所得者の年収の金額だけをただ比べても、意味がありません。
情報の本質にあらゆる角度から迫って、そのものの実態をつかまなければ、なにもわかったことにならないのです。


情報に敏感にアンテナを張ることは誰にとっても大事です。
とくに仕事に関しては、専門的な情報も、グローバルな情報も広範囲に必要。
ただし、情報を集めたら、それらの本質を見極めるプロセスを必ず入れてください。
この情報が示していることの本質はなにか。
本質に到達して初めて、情報を活かすことができます。
情報の表から裏から、上からも下からも、ためつすがめつよく見る目を鍛えましょう。




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髙倉 博

株式会社店舗ドック代表取締役

1970年、東京都世田谷区生まれ。
大学進学に失敗し簿記の専門学校へ進んだ経験が、「大卒者には負けない」という原動力となる。

卒業後、父親の会社で「自分が脇役の人生になってしまう」と焦りを感じて起業。
創業7年目の34歳で看板用LED事業で成功を掴むが、取引先の倒産などが重なり、36歳で1億円の借金を抱える。

最愛の母の死をきっかけに人生を見つめ直し、コンサルタント長山宏氏との出会いを経て再起。
「不安や不便を見つけ、クリエイティブに解決する」(快適の創造)というミッションを見出し、大手企業向けの看板業務代行に注力して評判を得る。

しかし42歳の時、社内クーデターを機に自暴自棄となり酩酊し、社員旅行の宿泊先の窓から飛び降りるも、標識に衝突し奇跡的に命拾いする。
自分を見つめ直し「看板で悲しむ人をゼロにする」という使命を確信し、「看板ドック」事業に邁進。

多くの顧客に支持され、2025年10月1日には、27年間続いた社名を「株式会社店舗ドック」に変更し、業界の更なる変革を目指している。


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