COLUMNコラム

『月刊高倉』2026年9月号:測ることと判定できることの違い。看板の倒壊を防ぐ真の安全基準とは

測ることと、判定できることは違います

朝夕に少しずつ秋の気配が混じるようになりました。
お客様各位、いかがお過ごしでしょうか。

先月号の終わりに、こう書きました。
図面のない既存の看板について、どうやって安全を証明すればよいのか。
その話を、今月お伝えいたします。

業界は、この十年で変わりました

私が看板ドックを構想したのは、2016年のことです。
ちょうど十年になります。

当時、点検といえば目視でした。

職人が見上げて、叩いて、揺すって、経験で判断する。
「なんとなく危ない気がする」という感覚が、そのまま結論になっていました。

そこに私たちは、非破壊検査という考え方を持ち込みました。
科学的に、数値で測るという発想です。

当時は珍しがられました。
けれど今では、同業他社も「非破壊検査をしています」と言うようになりました。

それ自体は、業界にとって良いことだと思っています。

ただし、一つだけ申し上げておきたいことがあります。

板厚計では、事故は防げません

他社の言う非破壊検査の多くは、板厚計を当てるものです。

支柱の露出している部分に機器を当て、鋼板が何ミリ残っているかを測る。
確かに、数値は出ます。

けれど、思い出していただきたいのです。

先月号でお伝えした栃木の事故で、看板はどこから倒れたか。
根元です。

支柱が折れたのではありません。地面との境目から、倒れたのです。

腐食がもっとも進むのは、雨水が溜まり、乾きにくい地際部です。
そして、そこは目に見えません。板厚計を当てることもできません。

見えないところが原因で倒れているのに、見えるところだけを測っている。
それでは、事故は防げないのです。

掘らずに、地際を診る

私たちが使っているのは、コロージョンドクターという装置です。

超音波を用いて、地際部の腐食状況を掘らずに調べることができます。
道路の標識柱や照明柱の点検で使われてきた技術で、国土交通省のNETISにも登録されています。

支柱の周囲を数か所測定し、反射してくる波形を解析する。
それによって、地面の下がどうなっているかを推し量ることができます。

ここまでが、道具の話です。

道具は、買えます

正直に申し上げます。

この装置は、買おうと思えば誰でも買えます。
実際、同業他社が導入する日も来るでしょう。

けれど、私たちが本当に大事にしているのは、その先です。

装置が出すのは、あくまで一次的なふるい分けです。
健全か、腐食があるか。その判別まではしてくれます。

しかし、こうは教えてくれません。

その腐食は、どの程度危険なのか。
今すぐ対処すべきか、来年でよいのか。
建て替えるべきか、修繕で足りるのか。

数値を得ることと、その数値で判定できることは、まったく別のことなのです。

判定基準は、買えません

私たちは、判定基準そのものを作ってきました。

大学との産学連携で、屋外広告物の実態に合わせた判定の考え方を組み立てています。
国の点検基準を土台にしながら、看板という構造物に合う形へと整えてきました。

この基準づくりには、二つの異なる知恵が入っています。

一つは、鉄道の世界の考え方です。
JR東日本出身の技術顧問が、当社の監修に加わっています。
日本でもっとも安全に厳しい世界で培われた安全基準の考え方と、カルテの作り方。それを看板に持ち込みました。

もう一つは、建築の考え方です。
一級建築士が、構造物としての見方を基準に組み込んでいます。

鉄道の安全思想と、建築の構造思想。
このどちらか一方だけでは、看板の判定基準は作れませんでした。

異なる分野の知恵を組み合わせて、新しいものを生む。
私はこれを新結合と呼んでいますが、看板ドックはまさにその産物です。

装置は、お金で買えます。
基準は、年月と、異なる分野の知恵の掛け合わせでしか作れません。

お客様が本当に必要とされているのは、測定値ではなく、判断だからです。

そして、保険があります

もう一つ、お伝えしておきたいことがあります。

当社の点検・診断には、専用の保険が付いています。
業界では、他に例を聞きません。

なぜ保険を付けたのか。

私たちの診断結果を根拠に、お客様は判断されます。
問題なしと申し上げたのに、万一のことがあれば、お客様に責任が及びかねません。

その責任を、私たちも一緒に負うべきだと考えたからです。

保険会社と組めたのは、判定基準に根拠があったからです。
基準のない診断に、保険は付けられません。

そして、ここが大事なところなのですが。

この保険、これまで一度も使われたことがありません。

私たちが問題なしと判定した看板で、事故が起きたことがないということです。

保険の存在よりも、使われていないという事実のほうを、私は誇りに思っております。

ご相談ください

図面がなくても、地際の状態を調べることはできます。
そして、その結果をどう判断すべきかまで、お伝えできます。

制度が変わり、確認が厳しくなる中で、お困りのことがございましたら、どうぞお声がけください。

季節の変わり目、どうぞご自愛くださいませ。

株式会社店舗ドック
代表取締役 髙倉 博


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