『月刊高倉』2026年8月号:看板を取り巻くルール変更と企業に求められる管理責任
看板を取り巻くルールが、変わりました
厳しい暑さが続いております。
お客様各位、そして現場に立たれる皆様、どうぞご無理をなさいませんように。
今月は、看板をお持ちのすべての企業様に関わる、制度の変化についてお伝えいたします。
ある事故から、すべてが動きました
昨年三月、栃木県の観光施設で事故が起きました。
金属製の看板が根元から倒れ、下敷きになった観光客三名が病院に搬送されました。海外から観光に訪れていたご家族で、うちお一人は頭や首の骨を折る重傷でした。看板は縦二・七メートル、横四メートル。当日は強風注意報が出ており、最大瞬間風速は二十七メートルを超えていました。
報道では、強風の影響とされました。
けれど私たちのような仕事をしていると、別のことを考えます。
強風は引き金にすぎません。根元が健全であれば、その風では倒れないのです。
支柱の根元、地面との境目は、雨水が溜まり、腐食が集中する場所です。
そして、外から見ても、まず分かりません。
そして、国が動きました
この事故を受けて、本年三月、国土交通省から通達が出されました。
少し制度の話をさせてください。
看板には、二つの手続きがあります。
一つは屋外広告物条例に基づく申請。もう一つは、高さ四メートルを超えるものに必要な工作物申請、いわゆる建築確認です。
これまで、この二つは縦割りでした。互いに干渉することがなかったのです。
条例の申請は出ているが、工作物申請は出ていない。そうした看板が、実際に数多く存在します。
今回の通達で、その連携が求められることになりました。
条例の窓口が、建築主事課へ工作物申請が出ているかを確認し、指導するようになったのです。
つまり、これまで通ってきたものが、通らなくなる可能性が出てきました。
ここに、大きな壁があります
では、工作物申請を出せばよいのか。
そう思われるかもしれません。
ところが、ここに難しい問題があります。
工作物申請に必要なのは、構造計算書です。
そして構造計算をするには、その看板の図面が必要になります。
新しく建てる看板なら、問題はありません。
けれど、すでに立っている看板の図面を、今から書き起こすことは、ほとんど不可能に近いのです。
支柱の状態がどうなっているのか。
基礎がどうなっているのか。
図面が残っていなければ、誰にも分かりません。
考えられる道は、三つです。
既存不適格として扱うか。改良して安全を担保するか。取り壊して新しく建てるか。
ただし、改良による道が認められるかどうかは、自治体の判断によります。地域によって、扱いが変わることもあります。ここが実務の難しいところです。
いま、確認していただきたいこと
そこで、この機会にご確認いただきたいことがあります。
貴社の看板のうち、高さ四メートルを超えるものはどれくらいありますか。
そのうち、工作物申請が出ているものはどれだけありますか。
図面が残っているものは、どれだけありますか。
おそらく、すぐには分からないという企業様が多いのではないでしょうか。
それは決して怠っていたからではありません。長年、二つの手続きが別々に運用されてきたからです。
ですが、これからは違います。
看板は、掲げた企業様の責任です。
広告主、設置者、所有者、管理者は、日常的に点検し、異常があれば直ちに補修して良好な状態を保つ責任を負うと、法にも明記されています。
そして万一の事故が起きたとき、問われるのは「知らなかった」ではなく「何をしていたか」です。
次号に続けます
では、図面のない既存の看板について、どうやって安全を証明すればよいのか。
ここが、いまお客様各社が直面している最大の問題だと思っております。
実は、方法があります。
支柱の根元、地面に隠れた部分の腐食を、掘らずに調べる技術があるのです。
ただし、調べるだけでは足りません。
その状態が、安全なのか危険なのかを判定する基準が必要になります。
この話は、来月号で詳しくお伝えいたします。
気になることがございましたら、それを待たずにお声がけください。
残暑もまだ続きます。
くれぐれもご自愛のうえ、お過ごしくださいませ。
株式会社店舗ドック
代表取締役 髙倉 博